籐(ラタン)とは
ラタンは「籐(トウ)」と呼ばれている植物で、籠や家具などの材料として用いられます。
それらの制作に用いられるラタンは「籐材料」、ラタンを使って作られたものは総じて「籐製品」と呼ばれます。
中には、伝統工芸品として何とも言えない趣を醸し出しているものもあります。
ちなみに、薄紫の花で知られる「藤(フジ)」は、漢字で表記するとラタンと混同してしまうこともありますが、双方とも植物でありながら全く異なるものです。
ラタンの「籐(トウ)」は〝竹冠〟で花の「藤(フジ)」の方は〝草冠〟となります。
そもそも、ラタンはヤシ科に属するツル性の植物で、フジはマメ科の植物と、根本的に別の種類なのです。
また、節があるので「竹」によく似た外見ですが、竹は中が空洞になっているのに対し、ラタンは繊維がびっしり詰まっていて層を作っています。
幹の太さは約2~5cmですが、その繊維は植物の中で「最強」とされており、高さも200mに及ぶものがあるなど地上の植物で「最長」とも言われています。
表皮に棘(トゲ)があるのも特徴です。
ラタンはその繊維によってしなやかで強い性質を持ち、素材としては通常の木材よりも丈夫と言われています。
耐久性も高く、太いものは杖の素材として用いられたり、家具のフレームに使われたりすることがあります。
一方、細く割いたラタンで籠を制作したり、敷物に使ったりすることもあります。
ラタンの原産地
ラタンの原産国は、アフリカ諸国、インドネシア・マレーシア・フィリピンなどの東南アジア、オーストラリアなどで、熱帯または亜熱帯のジャングルなどに分布しています。
日本では自生せず、国内での栽培も行われていません。そのため、籐製品の制作にはすべて輸入材が使われます。
ラタンの種類
植物としてのラタンには様々な種類があり数百種とも言われていますが、「籐材料」の時点では、大きく分けて『丸籐』と『割籐』の二つになります。
『丸籐』は皮がついたままの素材で、強度が高いため、大型家具など「丈夫で長持ちしてほしい」というものに適しています。
1970年代頃は皮付きの状態で輸入されていましたが、現在はほとんどが皮をはいだ状態で輸入され(皮の形状や感触を活かしてそのまま家具に用いられることもありますが)、加工工場で研磨したり真っ直ぐにしたり長さをそろえたりするという工程を経て使われます。
【写真】 丸籐
ラタン原木から水洗いをした状態
『割籐』は、皮はいだものを指し、丸芯籐・半芯籐・皮籐などがあります。
近年は、これらが主に籐製品の材料として使われます。
「丸芯籐」は、文字どおり丸籐の皮を削った芯の部分で、断面を円形にしたものです。
艶や柔らかさを持つことが特徴とされています。断面が半円形の場合は「半芯籐」と呼ばれ、この他、方形(四角形)の「平芯籐」を用いることもあります。
丸芯籐は籠や大きな椅子を編み上げるのに使われます。
「皮籐」は、皮の部分だけを一定の幅と厚みに調整した素材です。家具だけでなく小物などの伝統工芸品に使われることも多々あり、より柔らかく繊細な作品のために、表面をさらに削る「面取り」や「背取り」を行った材料もあります。
何に使われている?
ラタンはその強さ・軽さ・柔軟性・耐久性などを活かし、様々な籐製品に用いられます。
先述のとおり、椅子やテーブルといった家具から、籠・扇子・うちわ・コースターなどの小物、髪飾り・ピアスなどのアクセサリーまでと、多岐にわたって活用されています。
さらに、平面に編み込んだものは、壁・タイルのような建材、あじろ・むしろのような敷物などに使われている場合も多々あります。
多くの人が、身近にあったり、触れたり、買ったり……という経験を持たれているのではないでしょうか。
自然素材であることから、夏は涼しく冬は暖かみを演出できるなど、四季を問わず、また、お住いの地方に関わらず、様々な場面で生活に取り入れることができます。
近年は、有害物質を吸着してくれる・湿気を吸収してくれるといったこともわかり、「人にやさしい」「地球にやさしい」という点でも注目が高まっているようです。
籐材料は、加工など大変な工程を経て世に出る究極の素材として、籐製品は、熟練の職人によって作りこまれる伝統工芸品として、いずれも長く愛されてきました。何よりもその歴史が、ラタンの安全性・耐久性・美しさなどを証明していると言えるでしょう。
あらためて、籐材料・籐製品の素晴らしさを見直してみましょう。